【弁護士解説】残業代請求の3つの解決方法|交渉・労働審判・訴訟のメリット・デメリット

【弁護士解説】残業代請求の3つの解決方法|交渉・労働審判・訴訟のメリット・デメリット

サービス残業ばかりで、正当な対価が支払われていない…。

会社に未払いの残業代を請求したいけど、弁護士に頼むとどうなるんだろう?

このような悩みを抱え、弁護士への相談を検討している方も多いのではないでしょうか。

会社に対して残業代を請求する場合、専門家である弁護士に依頼することで、交渉を有利に進め、適切な金額を回収できる可能性が高まります。

この記事では、弁護士に残業代請求を依頼した場合の3つの解決方法(交渉・労働審判・訴訟)について、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 弁護士による残業代請求の3つの解決方法
  • 「交渉」「労働審判」「訴訟」それぞれの流れと特徴
  • 自分に合った解決方法を選ぶためのポイント

弁護士による残業代請求|解決までの3ステップ

弁護士に残業代請求を依頼した場合、解決方法は主に以下の3つです。一般的には①から順に進めていくケースが多くなります。

  1. 交渉(話し合い): 弁護士があなたの代理人として会社と直接話し合い、解決を目指す方法。
  2. 労働審判: 裁判所で、裁判官と専門家を交えて話し合い、解決を図る手続き。
  3. 訴訟(裁判): 裁判官が法廷で双方の主張を聞き、最終的に判決によって解決する手続き。

どの方法が最適かは、証拠の状況や会社の対応、あなたが望む解決の形によって異なります。まずは、それぞれの特徴を理解しましょう。

① 交渉(話し合い)による解決

交渉は、裁判所を通さずに当事者間の話し合いで解決を目指す、最も穏便かつ基本的な方法です。

弁護士に依頼すると、まず弁護士名で会社に内容証明郵便を送付し、未払い残業代の支払いを求めます。この通知には、請求額の計算根拠や支払期限などが記載されており、会社に対して「法的な手続きも辞さない」という強い意志を示すことができます。

交渉のメリット 👍

  • ✅ 迅速な解決が期待できる: 裁判所の手続きを挟まないため、早ければ1〜2ヶ月程度で解決することもあります。
  • ✅ 費用を抑えられる: 労働審判や訴訟に比べて、弁護士費用や実費が安く済む傾向にあります。
  • ✅ 精神的な負担が少ない: 会社との直接のやり取りを全て弁護士に任せられるため、精神的なストレスが大幅に軽減されます。
  • ✅ 柔軟な解決が可能: 公開の場ではないため、解決金の支払い方法や守秘義務など、柔軟な条件で和解できる可能性があります。

交渉のデメリット 👎

  • ❌ 会社が応じない可能性がある: 交渉はあくまで任意のため、会社が話し合いに応じなかったり、不誠実な対応を取ったりする場合があります。
  • ❌ 強制力がない: 会社が支払いに応じない場合、強制的に回収することはできません。その場合は、次のステップを検討する必要があります。

ポイント

まずは交渉での解決を目指すのが一般的です。会社側も裁判沙汰になることを避けたい場合が多く、弁護士からの通知によって交渉のテーブルについてくれる可能性は十分にあります。

② 労働審判による解決

労働審判は、労働者と会社の間のトラブルを迅速かつ適正に解決するために設けられた、裁判所での手続きです。裁判官1名と、労働問題の専門家である労働審判員2名で構成される「労働審判委員会」が、双方の言い分を聞き、解決案(調停案)を提示してくれます。

原則として3回以内の期日で審理が終了するため、訴訟に比べてスピーディーな解決が期待できます。

労働審判のメリット 👍

  • ✅ 迅速な解決: 訴訟(裁判)が1年以上かかることもあるのに対し、労働審判は申立てから約2〜4ヶ月での解決が見込めます。
  • ✅ 専門家が間に入る: 労働問題の専門家が中立的な立場で話を聞き、法的な観点だけでなく、実情に即した妥当な解決案を示してくれます。
  • ✅ 手続きが非公開: 訴訟と違い、手続きは非公開で行われるため、プライバシーが守られます。

労働審判のデメリット 👎

  • ❌ 異議申し立てで訴訟に移行: 労働審判委員会が下した「審判」に対して、当事者のどちらかが2週間以内に異議を申し立てると、自動的に訴訟手続きに移行してしまいます。
  • ❌ 準備が重要: 原則3回という限られた期日で結論を出すため、申立ての段階で主張や証拠をしっかりと準備しておく必要があります。

③ 訴訟(裁判)による解決

交渉や労働審判で解決しなかった場合の最終手段が、訴訟(裁判)です。公開の法廷で、お互いの主張と証拠を出し合い、最終的に裁判官が法律に基づいて判決を下します。

訴訟のメリット 👍

  • ✅ 強制力のある解決: 判決が出れば、相手が支払いに応じなくても、給与や財産の差し押さえといった強制執行が可能になります。
  • ✅ 遅延損害金や付加金の請求も: 本来支払われるべきであった残業代に加えて、遅延損害金(※)や、悪質なケースでは「付加金」(未払い残業代と同額)を請求できる可能性があります。

    ※在職中は年3%、退職後は年14.6%

訴訟のデメリット 👎

  • ❌ 時間がかかる: 解決までに1年以上かかることも珍しくなく、長期戦になる覚悟が必要です。
  • ❌ 費用が高額になる可能性: 解決までの期間が長引けば、その分弁護士費用も高くなる傾向があります。
  • ❌ 精神的な負担が大きい: 公開の法廷でのやり取りや、尋問などが行われるため、精神的な負担が最も大きい方法と言えます。

まずは弁護士に相談し、証拠がどの程度揃っているか、会社がどのような対応をしてきそうかといった点を踏まえて、最適な方針を一緒に決めていくことが重要です。

残業代請求でお悩みなら、まずは弁護士に相談を

「自分はどの方法が良いんだろう?」「そもそも請求できるか分からない」

そんな方は、一度労働問題に詳しい弁護士に相談してみませんか?

今回は、弁護士に依頼した場合の残業代請求の3つの解決方法について解説しました。

  • 交渉: 最も迅速・円満な解決が期待できる方法。
  • 労働審判: 専門家を交え、比較的短期間で判断を仰げる方法。
  • 訴訟: 時間はかかるが、最も強力な解決方法。

未払いの残業代は、あなたが働いた正当な権利です。会社に対して「請求しづらい」と感じるかもしれませんが、一人で抱え込む必要はありません。

専門家である弁護士に相談することで、あなたにとって最善の解決への道筋が見えてくるはずです。

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